「花も花なれ」ストーリー

戦国の風雲児・織田信長の媒酌で、細川忠興に嫁いだ明智光秀の娘玉姫は、忠興と幸いの日々を送っていた。しかし、1582年。その父光秀が、突然謀反の槍を主君信長に向け京都・本能寺に信長を討つ。

その時から玉の運命は一変し、謀反人の娘として京都・味土野に幽閉され、時代の非情の波に翻弄される。
悲しみの懊悩の中で、時に仏門に学び、切支丹の教義に触れ、自らの在り様を戦乱の暗雲の中に尋ね求めるのであった。

玉姫は、秀吉に依り許されて大阪に戻った後、侍女いとに依って切支丹の洗礼を受け、その名をガラシャ(神の恩寵の意)と名乗る。

天下の覇権を争う豊臣方の石田三成は、細川忠興を味方に付けようと、徳川に従い上杉攻めに参戦している忠興の留守に、その身の安全を守るとの名目でガラシャを大坂城に迎えようと画策する。

だが、主無き館を守るは武門の女性の役目と、ガラシャは動じない。業を煮やして三成は手勢を差し向ける。だが、ガラシャは、自らの在り様、即ちあらゆる修羅が自身を襲ったとしても、動じる事無く端然としている事が、やがて平安にいたる道であると、自らの生を位置付けていたのである。そして、平安の門とは仏法にいう菩薩道。キリストの苦難も又修羅であると談じるのであった。

このガラシャの生死を半ば揶揄するかに登場した隠れ女忍・出雲阿国は、このガラシャ の言葉と死を目前にして揺るがぬ佇まいに、突然まだ嬰児の四郎を自分に託せという。ガラシャは素性は違えどこの阿国に自らを投影し、四郎自身の修羅を生きよと阿国に一子四郎を託すのであった。

16年後。
諸外国の勢力拡大に対抗する為、徳川幕府は鎖国に活を求めるべく、その先鋒となる切支丹に脅威を抱き、極端な切支丹排追に着手し、その凶暴な権力の目を、肥後の国の天草 ・島原に向ける。切支丹信徒に叛旗を翻させ、鎮圧の名目で一気に切支丹圧殺を画策し、 服部半蔵以下服部忍軍を肥後の国に向かわせる。半蔵は、忍びと蔑まされた身を士分として確立しようと一族と共に天草に向かうのであった。

更に、出雲阿国も四郎の窮地を知り天草に向う。

神に祈りを捧げながらも、人々の苦しみが変わらぬ事に傷つき苦しむ四郎。
それをただ見つめるより他無い、母ガラシャの魂魄 ―。
そして ―。